■プロフィール

〇お話をうかがった荒木さんご一家

 荒木泰(とおる)さん/30代(医療関係者) 

 荒木友梨(ゆり)さん/30代(子育て支援・保育士など)

 瑛(ひかる)くん/10歳(小5)

 優芽香(ゆめか)さん/8歳(小3)

〇移住したのは……

 2023年4月、東京から

〇移住の目的は……

 お子さん2人を伊那西小学校に転学させるため

〇現在のお住まいは……

 伊那西・ますみが丘

 事業用物件を賃貸(とても広い!)

〇物件を選んだ決め手は……

 伊那西小学校の学区内、景観、隣に森があるから

きっかけは伊那西小学校

――荒木さんご一家が東京から伊那西に移住したのは2023年4月だそうですね。

友梨さん)はい。初めは中央区、11月からはますみが丘に住んでいます。

――伊那西に移住しようと思ったきっかけは?

友梨さん)子どもを伊那西小学校に通わせるためです。

上の子が通っていた東京の学校は1クラス38人で、「教室のなかがうるさくて通うのがイヤだ」と。2人とも私立の小学校に通っていたのですが、勉強に追われていて、もっとのびのびした環境がいいだろうと思っていたんです。

そうやって東京で窮屈な思いをして、行きたくないのに学校に通うよりは、楽しく通えるほうがいい。それに、もし移住してまた学校に行きたくなくなったら、東京に帰ってきてフリースクールや好きな場所を見つければいいと思っていたので。

――なるほど、移住って、「ダメだったら戻ればいい」くらいが、ちょうどいいかもしれないですね。

友梨さん)そう、東京の家はまだ売っていないので、移住がダメだったら帰れるんです。だから、「やってみよう」と。

それで、初めは、以前私の仕事の関係で連れて行ったことのある北海道の学校に通わせようとしていたんですが、知人から「複式学級で生徒の人数が少ない=住む家がない。逆に、家がある=すごく子どもが増えていて東京とたいして変わらない、ということだよ」と言われて。

それでほかにもあちこち調べていたなかで、たぶんネットの記事で伊那西小を見つけたんです。

――移住前に下見はしましたか?

友梨さん)2回くらい来ました。初めて来たときは、まだコロナ禍で学校の見学ができなくて、市役所の辺りや不動産屋さんに行って、日帰りしました。

そのあと新山にある移住体験住宅に2泊か3泊しまして、その間に学校見学をさせてもらいました。生徒の人数が少なそうだし、うちの子は森がすごく好きでもあるので、「ここなら通いたい」と、子どもたちが二人とも言ったんです。「じゃあ引っ越そうか」と。

結局、2023年の2月ぐらいから探して、3月末には住民票を移しました。

――結構スムーズに決まったんですね!

友梨さん)そうですね。伊那西小に移れるのは先着順なんですけど(※2024年現在は、10〜11月までが申し込み期間/定員を超えた場合は抽選)、当時の新2年生の枠が、あと一人だったんです。それで、「伊那西小学校に通うなら、とにかく早く伊那に住民票を移してください」と言われて。

「どこでもいいからとりあえず探そう」と、できるだけ家賃が安くて小学校から近いところで家を探して、中央区の家を見つけました。ただそこは仮住まいのようにして、「もっといいところが見つかったら引っ越そう」と。

転校してみて……

――移住に際して、お仕事はどうされました?

友梨さん)私はもともと勤めていた東京の職場でまだ働いています。基本的にテレワークですけど月に2~3回、土日に帰っています。主人は新しい職場に移ったんですけど、前の職場にも非常勤として残っていて、私が東京に帰るタイミングで夜勤だけしています。

――じゃあ、2拠点とまではいかなくても、東京との関係性はまだ続いているわけですね。

友梨さん)そうですね、月2~3回はみんなで東京に戻っていて。それで、子どもたちは東京にいる友達と遊んだりしていますね。

――お子さんたちから「東京に友達がいるから転校したくない」という意見は出ませんでしたか?

友梨さん)上の子はすごく悩んでいました。それで、「行きたくなければ行かなくてもいいよ。最終的には子どもたち二人で相談して答えを出してね」と伝えたら、「やっぱり長野のほうがいい」と。

――実際に伊那西小学校に転校して、どう感じましたか?

友梨さん)学校の森を使った学習が、私も子どもたちもすごく好きで。2人ともすごく楽しんでいますね。

ただ上の子は少人数教育で悩んでいるところもあって、「やっぱり学校には行きたくない」「でも、あの森は好きだから転校するのはイヤだ」と、いまは休んだりしながら通っています。

――伊那西小は2018年(平成30年度)に特認校になったばかりで、人気は出たけど逆に現場はバタバタして、だけどだいぶ落ち着いてきた、という話も聞きます。いまは、生徒は移住者と地元の子でどっちが多いんですか?

友梨さん)移住者の子のほうが若干多いくらいですね。

――今後、小学校に期待することはありますか?

友梨さん)学校林が豊かなので、もっと活用したらいいなと思います。子どもたちもゲームで遊ぶんじゃなくて、身近に森を楽しんだりする生活になれば、もっと伊那の価値があると思うんです。これだけ自然が豊かなんだから。

ラッキーな出会い

――お住まいについて伺います。初めに住んだ中央区の家はどんなところでしたか?

友梨さん)街中で、全然長野らしくない(笑)。スーパーも図書館も銀行も駅も歩いていけるし、車も渋滞しないし、なんなら東京の家より利便性は高かったですね。

――その後、中央区からますみが丘に引っ越しますね。

友梨さん)学区内に住みたかったんです。それに、景色のきれいな感じとか、私がますみが丘の雰囲気をすごく好きで。そうしたら、たまたまネットにますみが丘の家が賃貸に出ていたんです。

泰さん)ただ、住みたいと思う地域が見つかっても、家がない場合が多いですね。空き家があっても空き家バンクに出ていないとか。

友梨さん)友達は、もうすぐ空く家が表に出る前に交渉して借りていましたね。

――ネットに出ていない情報はいっぱいありますよね。やっぱり地元の人の紹介が強い。

友梨さん)そういう人と出会えるかどうかが重要ですね。

――いまのご自宅の決め手になったのは?

友梨さん)学区内であること、立地、隣に森があることです。

――購入ではなく賃貸にしたのは?

友梨さん)東京に戻るかもしれないので。「賃貸はなかなかない」って言われていたんですけど、ラッキーでした。しかもめっちゃ広いんですよ! 森のなかに家がある感じで。しかも住んでみてわかったんですけど、ちゃんとしているお家みたいで、小さい灯油ストーブ1台でも全然寒くないんです。

――最高ですね(笑)。

友梨さん)東京の家を貸しているので、家賃的にはプラマイゼロで借りている感じです。

――いまの家で不便なところはありますか?

友梨さん)何もないです、すごく楽しくて。まわりからは「ますみが丘の交差点を超えると、雪も降るし山の天気になる」と言われていましたけど、雪が降っても生活に困るほどではないし、むしろ遊べるので(笑)。娘も外で遊ぶのが好きで、木登りしたり蔓にぶら下がったり、楽しそうにしていますね。

――森は自分で手入れしているんですか?

友梨さん)その約束で借りているんですけど、いまは危なそうな木を片付けるくらいしかできていなくて。今度チェーンソーの資格を取りに行こうかなと。

――畑をやる予定は?

友梨さん)この間、ジャガイモと野菜を少し植えました。

あと、上の子が農家になりたいってずっと言っているんです。東京の頃から畑と田んぼで遊んでいたんですけど、「大きくなったら無農薬で美味しい野菜を届けたい」と。それでいま、耕したりしています(笑)。

主人も「仕事を辞めて畑をやりたい」と。自給自足の生活をしたいみたいです。もともとキャンプもすごく好きな人なんですけど、いまはもう、家がキャンプ場ですね(笑)。

▲荒木さんのお住まいの隣の森

つづき後編へ

■聞き手・構成:岡澤浩太郎

►八燿堂: www.mahora-book.com

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