大坊

水音や木漏れ日に、
心落ち着く谷の暮らし。

大坊は伊那西地区の南側、清流小黒川沿いに息吹く集落です。代々続く家々が、谷間の深い緑の中で静かに穏やかに暮らしています。絶えることのない水音、柔らかな木漏れ日、風のささやき、動物たちの気配、その一つひとつに五感が研ぎ澄まされます。ここでは、都会の喧騒とは真逆の日々が営まれています。

大坊の イイ ところ

1.ヤマメも泳ぐ清流
2.谷を照らす朝日
3.ツウ向け撮影スポット

小黒川ブルーと大坊グリーン。物語を感じさせる谷。

中央アルプスを源流とする小黒川沿いに細長く広がる集落です。ますみヶ丘の高台から伊那西部広域農道を南に下り、いちばん低くなったあたりに「大坊入口」という標識が佇んでいます。


現在大坊に暮らす家は約25戸、昔から代々続く家や数十年前に建てられた家が多いです。田畑を挟んで点在しているため、隣家まで数十メートル離れていることもあり、それぞれの家がゆったりと暮らしています。


小黒川の上流には土砂崩れ防止を担う砂防ダムが小さな湖を作り、初夏になると湖畔でバーベキューや渓流釣りなど、住民たちは思い思いに川に親しんでいます。清流にはヤマメ、山の斜面にはタケノコや山菜、林からはイノシシやニホンカモシカが姿を見せることもあります。

大坊には派手な観光スポットはありませんが、春は桜、夏は色濃い緑、秋は紅葉、冬は雪に包まれることもあり、表情豊かな自然が一番の資源です。フォトジェニックな穴場という噂を聞きつけて、奇跡的な一瞬を狙いに来るカメラ愛好家も見かけます。冬の早朝には、運がよければ「南アルプスの女王」とも呼ばれる仙丈ヶ岳から朝日が顔を出す「ダイヤモンド仙丈」に出合えます。


集落は伊那西部広域農道と交わる県道202号伊那駒ヶ岳線沿いにあります。大坊を西に抜けると、小黒川渓谷キャンプ場がある内の萱へと至ります。小黒川スマートインターから車で約5分、市街地からは車で約10分でアクセスできます。

大坊での 暮らし

静かで穏やか。
ただし外からの移住は難しい。

大坊での暮らしは「静かで穏やか」。 谷間にあるので風もあまり強くありません。大雨や嵐の時こそ川の増水に用心する必要はありますが、砂防ダムができてからは土砂災害対策も進んできました。ふだんの小黒川はサラサラと穏やかな水音を奏で、田んぼや畑に恵みをもたらしています。

大坊では、植栽や庭を丁寧に手入れしている家が多く、谷の地形でありながら、明るく開放的な風景が広がっています。住人たちは「親の世代からこうしていたから」「手入れしていないと笑われるから」と照れた様子ですが、静かな谷でそれぞれに楽しく暮らす工夫を身につけている人が多いのかもしれません。家の中を明るく快適にして長い冬を楽しむ北欧の人たちの感覚にどこか通じるものがあるようにも感じられます。

しかし、大坊は誰でも移住できる土地ではありません。農地が多く、宅地として購入できる土地がないため、大坊にまったく縁がない人が移住するのは現状では難しいです。また、上水道の確保もハードルが高く、限りある湧き水を数軒ずつで分け合っているので、新参者は入っていくのが難しいのが正直なところです。

大坊にはヨガやアーユルヴェーダなど、こだわりの活動をしている店や人もいます。大坊に興味がある人は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょう。

大坊の
日々を知る
大坊の日々一覧

大坊の み どころ

SHUHARI

アーユルヴェーダサロン。体質診断や薬草オイルのトリートメントで「誰もが自分らしく生きるための心と体に向き合う時間」をお手伝い。スクールやヨガ教室なども開催。

SHUHARI ホームページ

砂防ダム

大坊湖をつくるダム。土砂の流出を防ぎ、水の流れを遅くする役割がある。昔は遊べたそうです。

庚申

地域や子ども達の安全を草むらから見護っている石碑。年に一度の草刈りで綺麗にします。

浅間神社

大坊公民館に隣接。社殿は大きな木に隠れている。

大坊公園

春には見事な桜を咲かせる。公園と呼ばれているが、遊具はない。

INTERVIEW

大坊に暮らす人

池上 誉さん

大坊で生まれ育ち、今も大坊で暮らしています。家には畑がありますが、私自身は他の事業も行う兼業農家です。夏は渓流釣り、冬は家のまわりの木を切って、庭で焚き火にくべながらひとり飲みを楽しんでいます。義姉は近くで「SHUHARI」というサロンを開いています。

大坊は昔から代々暮らしてきた家が多く、土地や水調達のハードルが高いため、外から移住してくる人はほとんどいません。進学や就職で出ていった子が戻ってきて新たな家を建てる場合には、地域の取り決めで水の分配がされています。伝統的な農村らしく、近所のつながりは強い方だと思います。高齢の世代が多くて、皆さんとても元気です。畑や庭の草が伸びていると近所の先輩方に笑われるので「ちゃんとやらなきゃな〜」と気合が入ります。

大坊全体としては年に一度みんなで公園の草刈りをしたり、水路の溝掃除などを通じてほどよく交流しています。昔に比べて子どもの数は少なくなりましたが、今も伊那西小学校に通っている子どもが数人います。

私が子どもだった頃は、小黒川が成す小さな「大坊湖」でよく水遊びをしていました。今は危険なので水に入って遊ぶことはできませんが、県外からやってきた人が渓流釣りやバーベキューを楽しんでいるのも時々見かけます。初夏にはヤマメやホタルにも出くわしますし、谷が深いので星空も見事です。

昔に比べると「森が大きくなったな」と実感します。私たちと同様に、森も育ち川の様相も変わってきてはいますが、昔も今も大坊は静かでいいところです。