谷に夏が来る前に。

2022年6月下旬、大坊地区の住民による地域の草刈りがありました。毎年恒例の夏支度で、今年も、大坊地区に暮らす約25戸の住民を中心に15名ほどが参加しました。

朝8時、「ビーバー」と呼ばれる電動刈払機を提げて大坊公民館に集合しました。伊那谷の農家ではよく見かけるこの電動草刈機。大坊でもほとんどの家に標準装備といった感じです。

大坊の生命力。

谷間の集落、大坊。水が豊かなことも関係しているのか、草木がものすごい勢いで生い茂ります。公園や草原、道端もあっという間に草だらけで、その生命力に圧倒されます。

例年ならまだ梅雨の真っ只中の6月下旬ですが、今年は梅雨が早く明けたのか、すでに真夏のような強烈な日差し。お家の庭や田畑の雑草抜きでさえ大仕事ですが、今日は地域全体に目を光らせて、草木を刈り入れていきます。

子どもたちの通学路を守る。

大坊の方たちが、みんなで草刈りをする理由はいくつかありますが、一番は、歩行者の安全確保のためです。

大坊には小黒川に沿って県道202号伊那駒ヶ根線が伸びていて、生活で行き来する車のほか、小黒川キャンプ場へ向かう県外からの車もよく通ります。伊那西小学校に通う子どもたちの通学路や遊び場にもなっているこの道。雑草の背が伸びて、車の視界を遮ってしまうと、とても危険です。

また、山と川が近い土地なので、多くの野生動物が暮らしています。初夏から秋にかけてはツキノワグマに出くわすこともあります。背の高い草木にクマが隠れてしまっては大変です。だから大人たちは、みんなの安心と安全のために、黙々と草を刈ります。

草いきれがこもる緑の道に、何台ものモーター音と、刃が草を刈る音と、刈り草の香りが重なります。

終了後のビールを楽しみに。

朝8時から始まった草刈りは11時頃に終了。終わったあとはみんなで懇談。(コロナ禍につき屋外でおしゃべり)そして、大仕事のあとに川のせせらぎを聞きながら飲むビールは最高で、みなさんの表情も晴れやかで、達成感に溢れています。アルプスを望む、大坊の公園(という名の草原)もすっかりサッパリしました。集落全体の草刈りは、この景観を守るためにも大切な行事なのです。

また、来年。